ショパンのピアニズム ~ピアノで火傷!?

どうしました、火傷でもしたのですか?   

 

楽譜を見る時に注目したいのは、普通でない箇所。アクセントやテヌート等が付いた音や、妙な掛かり方をしたスラー、突然に表れる3連符や5連符などはわかりやすい例でしょう。

 

他にも、ん?なんでココこんな風に書いた?と疑問に感じられるような箇所、そこにはきっと作曲者のこだわりがあります。

上はショパンのワルツop.34-2ですが、2小節目の2拍目Fisが四分音符になっています。何故でしょうね。

 

 

他には、3番のソナタの第3楽章の右手のパッセージ、二分音符や付点四分音符、四分音符が入り混じっています。

何故こんな書き方をしたのでしょうか。

 

 

もっとも馴染み深いのはこちら。

バラード第1番ト短調作品23のテーマです。ド、レ、ファ♯が持続音になるように、律儀にも順に二分音符、付点四分音符、四分音符で書かれています。

 

ここまで念入りに記譜された持続音の狙いは何なのでしょうか。

 

机上で楽譜を見る限りにおいて、これら持続音がハーモニーの基盤を成す音だということは分かります。これらを意識することで響はよりクリアなものになるでしょう。

 

でも果たしてそれだけでしょうか。

 

実際に演奏してみましょう。長い音符では指が鍵盤を押さえたままの状態になります。バラードに至っては、これら持続音の都合上、旋律の頂点の2音(bとa)は5指をスライドさせて弾くよう指示があります。

 

この時の手の感覚というのは、各指が鍵盤に吸い付いているといいますか、手が鍵盤に収まりきっているといいますか、手と鍵盤に異様なほどの一体感があります。

 

これが大変に重要なことだと思いまして、これらの楽譜からは持続音がハーモニーを形成するという理屈以上に、極力、手が、指先が鍵盤と親密な関係でいることが求められているわけです。

 

手が鍵盤上を滑るように移動してゆくショパン特有のピアニズムが見えてくるではありませんか。

ですから、これらの二分音符や四分音符を弾く時に指先を鍵盤から離してしまおうものならば、すかさず、ショパンさんに注意されるのです。

 

火傷でもしたのですか?

そんなに鍵盤は熱いですか?